ちなみに、埼玉スタジアム2002では1層目の前段が17度、同後段が19度。2層目が28度で横浜国際総合競技場と同じくらいの傾斜だが、こちらはサッカー専用競技場であり、スタンドまでの距離が近いので大きな問題にはならない。

 同じく専用スタジアムである吹田市立サッカースタジアム(パナソニックスタジアム吹田)の場合は、1層目も20度以上で2層目、3層目ともに34.9度というから、試合が見やすいのは当然である。

 さらに豊田スタジアムの上層スタンドの傾斜は38度、鳥栖スタジアム(駅前不動産スタジアム)上層スタンドに至っては40度もあるので、どちらも大変に試合が見やすいスタジアムと言われている。

■試合に集中させるスタンドと大屋根

 つまり、ピッチからスタンドまでの距離と言う意味でも、スタンドの傾斜が急であるという意味でも、国立競技場は陸上競技場としてはとても試合が見やすいスタジアムなのである。

 さらに、改築前の旧国立競技場はバックスタンド側には1964年のオリンピック開催前に施された改築によって非常に高い「三日月状」のバックスタンドが増設されたが、メインスタンドは低いままだったし、屋根はメインスタンドの後段だけだった。

 そのため、バックスタンドの座席からはメインスタンド越しに新宿の高層ビル群であるとか、富士山などを眺めることができ、景色としてはとても美しいものだった(とくに、冬場の午後の試合が終盤にかかる頃は夕景が素晴らしかった)。

  1. 1
  2. 2
  3. 3