【スタジアム考察】「旧国立競技場」からのさまざまな改善点【新国立競技場の魅力と問題点】(3)の画像
傾斜があり、サッカーの試合も見やすい国立競技場のスタンド 撮影:中地拓也

 年末年始を通じて、「新」国立競技場には多くのサッカーファンが足を運んだ。東京オリンピックのメイン会場になるなど多目的での使用が可能だが、サッカー観戦にも向いているとサッカージャーナリスト・後藤健生は考える。一方で、気になる点もある。新国立競技場の魅力と問題点をひも解く。

■観客をピッチに近づける「傾斜」

 国立競技場が、陸上競技場としては試合が見やすい2つ目の理由は、スタンドの傾斜が急であることだ。

 国立競技場のスタンドは1層目が20度、2層目が29度、3層目が34度の傾斜となっている。

 傾斜が急であれば、スタンドからピッチを見る時に俯瞰的に見ることができるので、ピッチ上の選手たちの動きが見やすくなる。これは、試合を見る際にとても重要なことだ(もっとも、ピッチ上の選手たちは平面上でプレーしているのにも関わらず、まるでわれわれが俯瞰的にピッチを見ているかのようにスペースを見つけてパスを通しているのだ。驚くべきことと言わざるを得ない)。

 何度も引き合いに出して申し訳ないが、横浜国際総合競技場の場合は1層目スタンドの前段が16.5度で、同後段が18度。2層目は30度だから、国立競技場に比べて傾斜がかなり緩やかなのだ。スタンドが直線状でピッチから遠い上に、傾斜が緩やかなのだから、横浜国際総合競技場はサッカーやラグビーの試合が見やすいスタジアムとは言えないのだ(こんなスタジアムで、2002年のサッカー・ワールドカップや2019年のラグビー・ワールドカップの決勝戦が行われたのだから驚きである)。

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