皇后杯全日本女子選手権大会では、日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織である日テレ・東京ヴェルディメニーナ(18歳以下のチーム)が、“初のプロリーグ”と銘打って発足したWEリーグで首位を独走しているINAC神戸レオネッサと、同じくWEリーグ所属の大宮アルディージャVENTUSをともに2対1のスコアで連覇して準決勝まで勝ち上がってきた。

 そして、準決勝では準々決勝で“姉貴分”のベレーザを破ったジェフ・ユナイテッド市原・千葉レディースと対戦したのだが、メニーナが90分間ボールを握って、まるで川崎フロンターレのようなリズムでパスを回し続けた。ただ、決定力に欠けて、前半立ち上がりの失点を返すことができずに決勝進出は逃してしまった。しかし、いくら堅守が特徴のチームとはいえ、WEリーグ所属のジェフ・レディースが18歳以下のチームを相手に守りを固めて逃げ切って勝利をつかんだというのは、実にシュールな光景としか言いようがなかった。

「ジャイアントキリング」こそがカップ戦の華なのではあるが、今シーズンの各カテゴリーのカップ戦では何度もそんな光景を目にしたのだった。

■サッカーを面白くする弱者と強者の駆け引き

 基本的には歓迎すべきことだ。

 戦力的に劣るチームが、「自分たちのサッカー」と称して普通に戦って、そして“普通に敗退する”のでは、サッカーの醍醐味を味わえない。サッカーという競技は、ラグビーやバスケットボールなどに比べるとはるかに番狂わせが起こりやすい競技なのだ。

 戦術的に工夫をして、全員が気持ちを一つにして戦い、そこにちょっとした幸運が付け加われば、かなりの戦力差でもひっくり返すことができる……。それが、サッカーというスポーツの面白さなのだ。

 そして、一方では強者の側のチームは、そうした「ジャイアントキリング」を起こさせないために、いかに効率的にゴールを決めるかという方法論を追及していくことでこのスポーツは発展していく。

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