【「圧巻の優勝」から見えるもの】日本代表にもヒントになる「セットプレー」と「ジャイアントキリング」【全国高校選手権を通じて考えるサッカーの奥深さ】(3)の画像
全国高校選手権は多くのことを教えてくれた 撮影/渡辺航滋(Sony α1使用)

 全国高校サッカー選手権大会の記念すべき第100回大会は、青森山田高校が制した。抜きんでた強さを示した一方で、細部にまでこだわる勝利へ徹底する姿勢も見せていた。また、敗れた側に立てば違う見方ができる。サッカージャーナリスト・後藤健生が、高校サッカーを通じて、あらゆる角度からサッカーの奥深さを考える。

■各カテゴリーで頻発した番狂わせ

 さまざまな工夫をしてジャイアントキリングを起こしたチームのことも、勝負にこだわって勝ち抜いた青森山田のことも大いに称えておきたい。

 ちなみに、「ジャイアントキリング」が多発したのは高校選手権だけではなかった。

 12月の初めにJリーグが終了すると、年末から年始にかけて、男女の各年代のさまざまなカップ戦が開催される。そして、2021/22年シーズンのカップ戦では実に多くの「ジャイアントキリング」が発生した。

 第1種の選手権、つまり第101回天皇杯全日本選手権大会では、準決勝ではJ1リーグで圧倒的な強さを発揮した川崎フロンターレが、J2降格が決まったばかりの大分トリニータに敗れるという大波乱が起こった。

 大分は守備を固めてアップセットを狙ったのだが、延長戦で残り時間がないところで川崎に先制される。「万事休す」かと思われた。だが、そこから実にスムースにパワープレーに切り替えて、最後はトップに上がったDFのエンリケ・トレヴィザンが同点ゴールを決めた。スムースにやり方を変えたあたりが、片野坂知宏監督が長い時間をかけて作り上げてきたチームの完成度を示していた。

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