【「圧巻の優勝」から見えるもの】高校サッカーで「格差」が広がる現状と、その打開策【全国高校選手権を通じて考えるサッカーの奥深さ】(2)の画像
FC東京に入る青森山田の松木玖生も中高一貫で英才教育を受けた 撮影/渡辺航滋(Sony α1使用)

 全国高校サッカー選手権大会の記念すべき第100回大会は、青森山田高校が制した。抜きんでた強さを示した一方で、細部にまでこだわる勝利へ徹底する姿勢も見せていた。また、敗れた側に立てば違う見方ができる。サッカージャーナリスト・後藤健生が、高校サッカーを通じて、あらゆる角度からサッカーの奥深さを考える。

■鳴りを潜めたロングスロー

 高川学園の「トルメンタ」も面白かったが、今年の大会ではやはり青森山田のセットプレーが最も印象的だった。

 そういえば、昨シーズンの高校選手権ではロングスローによる得点が極端に多くなって議論を巻き起こした。

「ルール上で許されているのだから」という肯定論も多かったが、僕はサッカーの本質とははずれているとやや批判的な立場を取った。もし、プロの世界でもロングスロー攻撃が増えてしまうようなら、エンターテインメントにも欠けることになる。最終的にはルールで禁止すべきだと思ったのである。

 実際、青森山田も昨年はロングスロー攻撃で数多くのゴールを決めた。

 今シーズンも、青森山田はロングスローも武器の一つとしていた。今年の大会で唯一先制を許した京都府代表の東山との準々決勝でも、青森山田の逆転ゴールは藤森のロングスローからのものだったし、決勝戦でも後半の立ち上がりに藤森のロングスローから松木が決めて勝利を決定的なものにした。

 だが、今年度は青森山田だけでなく、他のチームを見渡してもロングスローからの攻撃はそれほど(昨年ほど)多くはなかった。

 それが何らかの傾向を示しているのか、単に上位進出チームにロングスロワーがいなかったからにすぎないのか……。来年度以降も注目していきたい。

 いずれにしても、相手が守りを固めてきた場合にセットプレーが有効なのはサッカーの常識の一つだ。そして、同じ“飛び道具”とは言っても、ロングスロー攻撃に比べればセットプレーはサッカーの技術を駆使した攻撃方法であり、汎用性も高い。

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