■パリSGが繰り出す恐ろしい「カウンター」
ここで、少し視点を変えてみる。パリSGが完全に成功した例に焦点を当てよう。ネイマールのケースだ。
ネイマールがバルセロナからパリSGに移籍したのは2017年夏だ。パリは契約解除金2億2200万ユーロを支払い、なかば強引な形でネイマールをバルセロナから引き入れた。
ただ、その移籍には伏線がある。
ネイマールの移籍前、バルセロナは数年にわたりマルコ・ヴェッラッティやマルキーニョスを追跡していた。パリSGの主力を引き抜こうとしていたのだ。そうした動きがパリSGの怒りを買い、最終的にはネイマールの移籍が実現した。バルセロナとしては、“カウンター”を食らった格好だった。
新興勢力が、伝統あるクラブからエース級の選手を引き抜いた。そのニュースは当時、衝撃と共に世界を駆け巡った。
ネイマールを失ったバルセロナは苦しんだ。ウスマン・デンベレ(移籍金1億500万ユーロ)、フィリペ・コウチーニョ(移籍金1億2000万ユーロ)、アントワーヌ・グリーズマン (契約解除金1億2000万ユーロ)を獲得したものの、ネイマールの代役を務められる選手はいなかった。
この夏には、リオネル・メッシが去りーー行き先は奇しくもパリであるーーチームはさらに弱体化した。本来ならば、30代に入ったメッシが去ろうとも、次代のエースとして獲得していたネイマールが健在であれば、それほど大きなダメージにはならなかったはずだ。21年ぶりのチャンピオンズリーグ・グループステージ敗退という結果の原因のひとつが、4シーズン前のネイマールの移籍にあるのは間違いない。