■ムードは一気に「もしかしたら」に変わった
先週の川崎との試合で負傷退場したペレイラが出場できたのは大分に幸いした。ペレイラは献身的にプレーを続けて、キャスパー・ユンカーも押さえこんだ。
そして、90分、自らのヘッドを浦和のゴールに突き刺した。
ムードは一気に「もしかしたら」に変わった。
5分のロスタイム。
また、延長かな、とも思った。
だが、私の位置からゴールのシーンは見えなかったが、両手を大きく広げて走り出した5番が見え た。
槙野だった。
槙野は浦和ベンチから飛び出してきた選手たちを振り切った。
試合終了の笛。私は槙野を見ていた。
槙野は拳を握りしめて両手を広げた。何か叫んでいた。
槙野の顔に笑みが浮かぶのはそれから数秒経ってからだった。
試合とは不思議なものだ。
もし、この試合が1-0のまま終わっていたら、普通に浦和が優勝しただけだった。
だが、最後の最後に槙野という大きなオマケがついたことで、これは忘れられない天皇杯決勝になった。リカルド・ロドリゲス監督が用意したプレゼントに槙野が答えたからだ。
浦和のお祝いは続いていた。
「片さんありがとう」というバナーが反対側の大分サポーター席の前にあった。
大分のファンは整然と選手たちと記念写真に収まった。