■「大きな鳥かご」でチームの団結を深める

 

 リカルド監督は、チーム全員で一つの大きな「鳥かご」を作らせたのだった。

全員で大きな鳥かごを作ってボールを回す浦和の選手たち

 鳥かごは、ディフェンス役の選手を取り囲み、円状になった攻撃側の選手がパスを回す練習だが、通常、攻撃側は5人程度で行われることが多い。また、攻撃側の選手は手をつながずにボールを回すことが一般的だが、この日のトレーニングでは、手をつないだまま、その場から動かずにボールを回さなければいけないという。さらに、ディフェンス役の選手に取られないように、15本連続でパスを回すという課題が与えられた。

 選手たちは全員でカウントしながらボールを回すが、すぐにディフェンス側の選手にボールを取られたり、手をつないでいた輪が乱れてしまったりと、なかなかうまくいかない。15本まであとわずかというところまで来ても、惜しいところでたどり着くことができなかった。なかなか思うようにいかない練習に試行錯誤しながらも、和気あいあいとした雰囲気で、楽しそうに挑戦する選手たち。そんな様子を見ていたリカルド監督やスタッフ、さらには集まったサポーターや報道陣からも笑みがこぼれていた。

 「15本が難しいなら、14本で」と、リカルド監督がノルマを修正し、やっとの思いで達成できた時には、すでに20分が経過していた。最後にボールを取られたGK西川周作とDF槙野智章が“罰ゲーム”を受けると、リカルド監督はサポーターたちの元へと駆け寄り、「毎日こんなにふざけているわけじゃありませんからね。いつもはちゃんと真面目にやってますよ」とフォローを入れ、集まった人たちの笑いを誘っていた。

 その後は3人1組でのクロスの練習を行った。キッカーが右サイドと左サイドからそれぞれ交互にクロスを上げて、ゴール前の2人がそれに合わせる。MF汰木康也やDFアレクサンダー・ショルツらは何度もゴールネットを揺らして、好調さをアピールしていた。

 トレーニングはおよそ1時間で終了。大きな鳥かごの練習で、チームには和やかな雰囲気があった。天皇杯は一発で勝負が決まるという大一番。浦和がACL出場権を獲得するためには、天皇杯で優勝するしかない。先日のJリーグアウォーズでJ1リーグ優秀監督賞を受賞したリカルド監督の狙いは、一つの目標に全員が一丸となって取り組むという、チームの一体感を高めることだったのではないだろうか。

 また、10月の負傷から調整が続き、名古屋戦で先発に復帰した明本がトレーニング後にオンラインでの取材に応じ、天皇杯への意気込みを語った。

(2)へ続く
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