後藤健生の「蹴球放浪記」第87回「タクシー運転手の憂鬱」の巻(2)山からやって来たアルゼンチンのドライバーの画像
バレンシアでのスペイン対ユーゴスラビア戦。主審の協力で、スペインはなんとかグループリーグ突破 提供/後藤健生
スペイン語で「ハリケーン」を意味する名を関するアルゼンチンの名門クラブの取材許可証

 サッカーは庶民のスポーツとして発展してきた。だから、サッカージャーナリスト・後藤健生も、移動には公共交通機関を使う。ただし、時と場合によっては、タクシーに乗ることもある。車内という小さな空間も、世界を知る窓となるのだ。

■地図を差し出したバレンシアの運転手

 僕はバレンシアに行ったのはこれが初めてで、しかも、たった今、列車で到着したばかりだというのに……。まあ、ラテン系の人たちは地図が苦手という人が多いようです。「何広場の猫が居眠りをしている角を右に曲がって……」というように地理を記憶しているのです。

 仕方がない、ホテルは旧市街のすぐそばだったはず。地図で調べて場所を確認し。初めて着いたばかりのバレンシアでナビを始めたのです。

「次の角を左ね」。「ダメだ。次は一方通行だよ」。「じゃ、3つ目の角は曲がれる?」といった会話を繰り返しながら、僕はようやくホテルまで辿り着いたというわけです。

 2001年4月にアルゼンチンに行った時、サンロレンソの試合を見に行ったら、スタジアム前にはビジャと呼ばれるスラム街が広がっていたので「帰りはどうしよう?」とビビっていたら、たまたま試合を見に来ていたタクシーが通りかかったので、それに乗って脱出した話は前にも「蹴球放浪記」でご紹介しました(第9回「乗車拒否の理由」の巻)。

 その翌々日にウラカン対ヒムナシアの試合を見に行った時も周囲は薄暗い場所だったのでちょっと身の危険を感じ、やはりすぐにタクシーを捕まえました。ウラカンでは、Jリーグの初期に横浜フリューゲルスで活躍して人気のあったフェルナンド・モネールが背番号3を付けて、相変わらず元気いっぱいにプレーしていました。

PHOTO GALLERY スペイン語で「ハリケーン」を意味する名を関するアルゼンチンの名門クラブの取材許可証
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