■ヴァランだけではなくもう1人欠けていた選手

 シティの攻撃は質や精度が高いとはいえ、イレギュラーなことをしているわけではなかった。しかし、ユナイテッドはこの5バック攻略のお手本通りの攻撃に対し、やられるがままになってしまった。
そうなってしまったのは、ヴァランだけでなくもう1人欠けている選手がいたからだ。

 サイドで数的優位を作られる前、5-3のラインの3の部分から誰かが引き出される形になってしまうのは、左右にスライドすることが間に合わないことで一度引いた状態から守備がスタートしてしまうからだった。

 そうなってしまう原因は、高い位置で相手のパスコースを限定できなかったからだ。トッテナム戦ではエディンソン・カバーニがその役割を見事にこなしていたが、彼もまたこのダービーは負傷欠場となった。

 この試合でカバーニの代わりにクリスティアーノ・ロナウドと2トップを組んだのはメイソン・グリーンウッド。彼の守備での仕事は5-3の前でシティの底にいるロドリに付き、釘付けにして試合の流れから外してしまうことだった。そうすることでシティの攻撃方向は限定され、3の部分の左右へのスライドがしやすくなる。

 しかし、グリーンウッドは不慣れなミッションをこなすことはできず、全力でプレスバックしないばかりか、肝心のロドリをフリーにしてしまうという守備意識の低さを見せてしまった。

 これで特に大きな割りを食ったのは3に組み込まれていたブルーノ・フェルナンデスだ。必要以上に守備に走らざるを得なくなったことで、攻撃に転じるタイミングで自陣ペナルティエリア付近という低い位置に存在することになった。

 最終ラインに組み込まれたままズルズル下がっていくしかなかったWBは当然それよりもさらに低く、これでは最前線にロナウドがいるとしても、まともな攻撃が行えるわけがなかった。

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