■蚊帳の外に置かれたB・フェルナンデス

 試合開始から10分間、両チームのテンションは異常なほどだった。7万3000人を超える観客の声援にかき立てられるように、パスも選手の動きも驚くようなペースで展開されていた。開始4分のリバプールの先制点も、激戦の単なる予兆でしかないと思われた。事実、最初のビッグチャンスを迎えていたのはユナイテッドだ。先制点を奪われる1分前、左サイドからの展開で、ブルーノ・フェルナンデスのゴール前でのシュートにつなげていた。

 だが、ハイテンションの攻防が落ち着くと、差が見えてきた。

 2点を追う状況になった22分、リバプール陣でボールを長いことボールを回したユナイテッドのプレーは、結局サイドバックのルーク・ショーのミドルシュートで終わった。ボールがない位置での動きなど、連係は見られなかった。

 開始3分で、象徴的なプレーがあった。ユナイテッドの攻めは手詰まりとなったが、球際での奪い合いでフレッジにボールがこぼれた瞬間、クリスティアーノ・ロナウドマーカス・ラッシュフォードはすかさず前線へとダッシュした。このプレーが、先述したB・フェルナンデスのシュートにつながったのだ。

 フレッジからボールが出てくると、ユナイテッドの選手には分かっていた。だが、それしか策がなかった。

 左サイドでラッシュフォードが縦に抜けても、最後のプレーにつながらない。逆サイドのメイソン・グリーンウッドのアーリークロスは精度を欠いた。本来ならば違いをつくり出す役割のB・フェルナンデスは、守備では顔を出すものの、攻めでは蚊帳の外に置かれてしまった。

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