■「画竜点睛」がなされた年

 1902年になってペナルティーエリアとゴールエリア、そしてゴール中央から11メートルのところにペナルティースポット(現在日本サッカー協会が発行している『競技規則』では「ペナルティーマーク」となっているが、「ペナルティーアーク」と見分けにくいので、この記事では「ペナルティースポット」とする)がつけられ、ほぼ現在の形になった。PKはこのスポットに置かれたボールをけり、GKはゴールライン上に制止していることになった。だがそれは、今日のうっとりするほど美しいピッチのラインから見れば、「画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く」ものだった。

 言わずもがなのことだが、「睛」とは「晴れ」のことではない、細かな文字ではわからないかもしれないが、「日へん」ではなく「目へん」である。意味は「ひとみ」。中国の唐の時代、ある画家がすばらしい竜の絵を描いた。だがその竜の目には、「ひとみ」が描かれていなかった。「なぜひとみを入れないのか」と尋ねられた画家は、「空に飛んで行ってしまうから」と答えたが納得してもらえず、ひとみを書き入れてみると、本当に飛んでいってしまった。この故事から生まれた言葉だ。中国文明は、なんと素晴らしい空想の力をもっているのだろうか。

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