■指揮官の采配が的中した後半の2得点
その谷口を下げたことに、鬼木達監督の決意が感じられた。
3枚替えによって、左サイドバックだった旗手怜央を中盤に移動させ、その左サイドバックに入った登里享平がキャプテンマークを巻いた。さらに、守備面でも前半からは変えて、いつものリズムを作ろうという意図を感じさせた。
そうした修正が実り、66分に同点弾が生まれる。右サイドから山根視来が上げたクロスが、ゴール前に侵入した旗手の頭にピタリ。ついにゴールネットを揺らしたのだ。最終ラインから中盤に移動して前線に飛び出しやすくなったがゆえのゴールだった。
運命の決勝弾も、鬼木監督の采配が的中したものだった。65分にピッチに送り込んだ家長昭博が前線に送ったボールを知念慶が頭で合わせたのだ。
知念はすでに足がつっており、試合の途中で足を伸ばす場面も見せていたから、ベンチでもその状態は知っていたはず。それでもその知念をピッチに残し続けた。鬼木監督の決断が生んだゴールだったといえそうだ。
試合後のピッチには、倒れ込む選手が続出するほど、走り切った。選手の奮闘と指揮官の采配が、等々力競技場の歓喜を生んだのだ。
「後半は修正できると思っていた」
これは、試合後に鬼木監督が発したコメントだ。そして、こうも続けた。
「選手はよくやってくれた。あきらめなかった姿勢を、神戸戦につなげたい」