■消えていない会長と監督の間のわだかまり

 バイエルン戦は完敗だったが、クーマン監督の見方は違うようだ。「起用できるFWは3人しかいなかった。戦術的にはコントロールできている時間もあったし、選手たちの姿勢に不満を抱くことなどない。しかしながらバイエルンとは選手のクオリティの違いがあり、なおかつ彼らは長い間一緒にプレーしてきている」。これが、指揮官の敗戦の弁である。

 アンス・ファティ、ウスマン・デンベレセルヒオ・アグエロ…。バルセロナに数名の負傷者がいるのは事実だが、改めてチームビルディングを行うにあたりクーマン監督が要望したのが、メンフィス・デパイとルーク・デ・ヨングの獲得だった。願いを叶えてあげたはずの指揮官にこのリアクションを取られては、クラブとしてはたまったものではないだろう。

 実際、ジョアン・ラポルタ会長とクーマン監督の関係は決して良好とは言えない。昨季終了時の段階で、監督交代の可能性がメディアで盛んに報じられていた。ラポルタ会長は、昨季終盤のラ・リーガの失速を受け、すぐにはクーマン監督の続投を明言しなかった。
1200万ユーロ(約15億円)と言われるクーマン監督の契約解除金を支払うことが難しく、さらにはマーケットの状況からバルセロナにふさわしい監督を見つけられず、最終的には続投が決まった。しかし、2人の間のわだかまりは消えていない。

 2002-03シーズン、バルセロナはシーズン途中にルイ・ファン・ハールを解任している。ラ・リーガで13位という成績不振が理由だった。フランク・ライカールトもジョアン・ラポルタ会長を納得させる成績を残せず、シーズン終了を待たずして退任を宣言された過去がある。

 他チームより消化試合数が少ないとはいえ、今季のバルサはラ・リーガ4試合を戦って2勝2分で現在8位。現地メディアは、バイエルン戦の敗退から3試合、つまり今月中にクーマン監督との今後について判断が下されると報じているが…。

 果たして、歴史は繰り返すのか――。終わり方まで「オランダ人の系譜」を継ぐ必要などないのだが、あのリオネル・メッシが退団するという衝撃のニュースを発信した現在のバルセロナにおいて、どんな事件が起きても不思議はない。

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