■サッカー場の「マストアイテム」

 サッカーのルール(競技規則)第1条の「8」に「フラッグポスト」の記述がある。

「各コーナーには、旗をつけた先端のとがっていない高さ1.5m(5フィート)以上のフラッグポストを立てる」

 日本語訳は表現が穏やかだが、英語板では「must be placed at each corner」となっている。フラッグポストはサッカー場の「マストアイテム」なのだ。もし4本のうち1本でも欠け、設置できない状況であれば、公式戦は開催することができない。試合中にその状況になったら、主審は試合中止を宣言するだろう。

 西ドイツで開催された1974年ワールドカップの決勝戦は、ミュンヘンのオリンピックスタジアムが会場となった。1972年のミュンヘンオリンピックで使われた陸上競技場である。試合は地元西ドイツ対オランダ。というより、「フランツ・ベッケンバウアー対ヨハン・クライフ」。当時の世界サッカーを代表する2大スーパースターの激突として大きな注目を集めた。

 ちなみに、東京12チャンネル(現在のテレビ東京)が、日本に初めてワールドカップの試合を生中継したのがこの試合だった。実況・金子勝彦、解説・岡野俊一郎、ゲスト・二宮寛の3人が、巨大なミュンヘン・オリンピックスタジアムの最上部の放送席から初めてワールドカップの興奮をリアルタイムで深夜の日本に伝えた、歴史的な試合である。

 だが、ベッケンバウアーとのコイントスに勝ったクライフが即座に「ボール」を選び、いよいよオランダのキックオフで世紀の一戦スタートと世界中が固唾を飲んだとき、思いがけない「大間抜け」が発覚した。コーナーフラッグポストが設置されていなかったのだ。

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