サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、「ピッチの隅に立つ4人の仲間」。サッカージャーナリスト大住良之が、フットボールの「歴史の証人」について語る。
9月2日に行われたワールドカップ・アジア最終予選の「日本×オマーン」は、どこか間の抜けた試合だった。思いがけない豪雨に見舞われたせいかもしれない。もしかしたら、私も含めて、どこかで、「苦戦はしても、最終的には勝てるだろう」と、試合を甘く見ていたせいかもしれない。
その「間抜け」の象徴が、1本のコーナーフラッグポストだった。前半26分に遠藤航が出したパスが雨に濡れた芝生でワンバウンドして伸び、懸命に追った原口元気はスライディングしながら押さえようとして止めきれず、そのまま滑ってコーナーフラッグポストに当たった。そしてポストは大きく傾いてしまったのだ。
ゴールキックとなったためか、UAEのモハンメド・アブドゥラ・モハンメド主審はフラッグポストがゴール裏方向に45度近くも傾いたのに気づかず、試合を続けさせた。ようやく彼がこの状態に気づいたのは、なんと12分後。前半38分に原口のパスを受けた長友佑都がゴールエリアに近づいたところを相手の右サイドバック、アムジャド・アルハルティがゴールライン外に出したときだった。日本の左CKである。
鎌田大地が右足でけるのを妨害するように、フラッグポストはゴール裏側に向かって傾いている。モハンメド主審に言われて鎌田はフラッグを抜いてピッチに突き刺し直したが、モハンメド主審は鎌田が突き刺した位置に満足できなかったのか、自ら再度引き抜き、2センチほどずらして突き刺し直すと、急いで中央に戻っていった。
原口が当たって大きく傾いたときから、私は「早く直さなきゃ」と思っていたが、普通なら出てきそうな競技場のグラウンドキーパーが出てくるでもなく(雨が強かったので躊躇したのだろうか)、また、副審のいないサイドだったため誰が直すでもなく、そのまま12分間もプレーが続けられてしまったことは、大奮闘のオマーン・チームを除いて間抜け続きだったこの試合の最大の大間抜けだった。もちろん、フラッグポストが間抜けなのではない。