■決勝戦が行われたのは全面改装されたスタジアムだった

 一方、西ドイツの方はハンガリーに敗れて2位通過だったおかげで、準々決勝以降はユーゴスラビア、オーストリアと対戦して楽に勝ち上がってきました。西ドイツのゼップ・ヘルベルガー監督は不思議なレギュレーションを利用するためにわざと2位になったというわけです。

 しかも、決勝戦当日のベルンは大雨となり、ぬかるんだピッチでは西ドイツ・チームが使用していたアディダス製シューズの取り換え式ポイントが威力を発揮したとも言われています(アディダス社の宣伝のような気もしますが)。

 さて、その決勝戦が行われたのはスイスの首都ベルンのシュタディオン・ヴァンクドルフ。この大会のために全面改装されたスタジアムでした。

 僕が、このスタジアムを訪れたのは1998年6月1日のことでした。

 フランス・ワールドカップに出場する日本代表がスイスのニヨンで事前合宿をしていたので、僕もその取材に行っていたのです。岡田武史監督がグラウンドの横に現われて「外れるのはカズ、三浦カズ」という日本サッカー史に残る一言を発するのは、スイス・カップ決勝戦の翌6月2日朝のことです。

 僕はニヨン滞在中に「1日午後にスイス・カップの決勝がある」ということを知ったのでベルンまで観戦に行ったのです。試合はFCローザンヌ・スポーツ(略称LS)とFCザンクト・ガレンの顔合わせで、2対2のまま延長戦でも決着せず、PK戦を制したLSの優勝が決まりました。古豪LSにとっては17年ぶりのカップ戦優勝でした。

 試合は大変な肉弾戦で、僕はスイスのサッカーが、あんな荒っぽいものだということを初めて知ってかなり驚きました。

※その2はこちら
PHOTO GALLERY ユーゴスラビア戦のプレス用ADカードとパリでFIFA総会が開かれた際のプレス用ADカード
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