■年を経て丸くなったが昔は四角

 さて、最初は木製だった「ゴールポスト」。その素材は、建材としてアメリカから大量輸入されていたダグラスファー(別名ベイマツ)という巨木だった。固く、真っすぐで、耐久性が高いため、英国では、1970年代までこの木がサッカーゴールに使われていた。しかし1980年代にはいって、より強く、加工がしやすい鉄製のゴールポストがつくられるようになり、すぐにより軽いアルミニューム製が主流となった。

 ポストの断面にも変化があった。木の柱だから、最初は当然四角だった。しかし1920年にノッティンガムのスタンダードゴール社という企業が丸い柱のゴールポストを開発、地元のノッティンガム・フォレストFCがさっそくホームゲームに使うと、またたく間に評判になった。

 四角いポストだとその前面に当たったボールは当然ピッチのなかに跳ね返る。しかし円形だと、当たり方によっては、ゴールの中に跳ね返ったり、また、ゴール外のゴールライン外に出ていくものができる。当然、ゴール数は増える。それだけでなく、四角いポストの角に当たってケガをするということがなくなった。

 「ちなみに」の「その4」。テレビ中継では、シュートがポストを直撃すると「ポストに嫌われた!」などと叫ぶアナウンサーがいるが、丸いポストには好き嫌いなどない。ただ、ボールの飛んできた角度と、ポストに当たるポイントの傾きに従って、宇宙を支配する物理的法則に則ってはね返しているだけである。左のポストを直撃し、真横に飛んで右のポストに当たってはいるゴールもあれば、右のポストから倒れたままのGKの手にすっぽり収まるボールもあるのは、運でもポストの好き嫌いでもなく、純粋にシュートの精度の問題、キッカーの技術の問題と言ってよい。

※第3回につづく
PHOTO GALLERY 【画像】94年W杯のロベルト・バッジョの決勝シーンほかゴールそれぞれにストーリーがある
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