■ゴールには絶対に通せない空間がある

「ちなみに」の「その3」。よくゴールの枠のことを「ゴールマウス」と言うテレビアナウンサーがいるが、故・岡野俊一郎さんが繰り返し注意していたように、英語で「ゴールマウス」と言うときには、ゴール前の地域、とくにゴールエリア付近を意味している。たしかに白いポストとバーで明確にされたゴールの枠は「口」に似ているが……。

 サッカーの「ゴール」とは、厳密に言えば、ポストとクロスバーのいちばん奥の部分とゴールラインのいちばん外の縁で囲まれる幅7.32メートル、高さ2.44メートル、厚さのない長方形の平面のことである。この平面をボールが完全に通過すれば得点、すなわち「ゴール」と認められることになる。

 だがボールは直径22センチほどの球形である。その結果、およそ17.86平方メートルのこの長方形の平面には、絶対にボールが通過しない部分が四隅に生じる。ボールをゴールの四隅のひとつにぴたったりとつけて見ればわかるのだが、ボールはその半径である約11センチメートルよりゴールポストとクロスバーでつくられる内側の角の方向にははいれず、角からのすき間は4センチにもなる。すなわち、正確に言うと17万8608平方センチの「ゴール」のうち、四隅で計約104平方センチ(約0.06%)は無用の長物ということになる。

 かつてどこかの練習グラウンドで、1本のアルミチューブを2回折り曲げる形でポストとクロスバーが成型されたゴールを見たことがある。このゴールは、組み立てや溶接などをしていないので、強さはあるに違いない。しかし当然、ポストとクロスバーの内側は90度で交わっているのではなく、やや内側に張り出すように曲線になっている。上に記したように、この部分には絶対にボールは触れないので、実用的には問題はないのだが、A型人間の私としてはどこか居心地の悪さを感じざるをえなかった。

PHOTO GALLERY 【画像】94年W杯のロベルト・バッジョの決勝シーンほかゴールそれぞれにストーリーがある
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