■そしてクロスバーが、最後にネットが発明された
さて、「近代スポーツとしてのサッカー」のゴールの話に戻そう。1866年に幅と高さは決まったが、ゴールの上限が「テープ」では、切れたり、はっきりしないケースが多発する。そこで考案されたのが「クロスバー」だった。テープではなく、ポストと同じ素材のしっかりとした木を使い、ポストとポストの間に張り渡して固定したものである。
「ちなみに」の「その2」。ポストとクロスバーは、1980年代に至るまで木製が普通だった。そのため英語では両者を合わせて「woodwork」(木造品)と呼ぶのが普通だった。その言い回しは、素材がより固い鉄製になり、さらにより軽いアルミ製になった現在もよく使われている。
クロスバーの発明者は誰か? イングランドのシェフィールドFCとスコットランドのクィーンズパークFCがともに「オレたちが先だ」と主張している。現在では、同時期、1875年ということになっている。そして1890年には、この連載の「第49回」で書いたようにゴールネットが発明され、「ゴール改善事業」はひとまず落ち着くことになる。
さて、「ポスト」と「クロスバー」であるが、この両者は明確に区別されなければならない。ポストは両側に立っている部分、クロスバーは「横木」の部分である。ポストというと私も含め日本人は「郵便ポスト」を思い出すが、サッカーのゴールに使われる「ポスト」という言葉は地面からまっすぐに建てられた柱や杭を意味する。そして「クロスバー」は、「張り渡された横木」である。
ポストとクロスバーを含むゴールの構造物全体を「ゴールポスト」と呼ぶ場合もあるが、たとえばシュートがゴールの枠に当たって跳ね返ったときには、「ポスト」なのか「バー」なのかを明確に区別する必要がある。面倒なのはどちらでもある場合、すなわち角のところに当たったときだが、それは「角に当たった」と表現すべきだと、私は思っている。