■プレスの瞬間的な迫力、圧力は世界トップクラスのブラジル

 ブラジルは6試合目でも非常にタフでしたね。そのなかで、一人ひとりの守備の迫力、圧力、守備範囲の広さに感心させられました。それは運動能力に起因していると思いますが、突破される場面がありつつも、球際を作り、奪えそうだなと思えるシーンは日本よりも多かった印象です。プレスの瞬間的な迫力、圧力は世界トップクラスだと思います。すべて前からいくのではなく、いくときはいく。後ろで構えるときは全員戻してでも構える。そのメリハリが効いていた印象です。

 最終ラインをハイラインにすることについては、スペインの前線にブラジルの最終ラインの選手を圧倒するほど飛び抜けて速い選手がいなかったことで、高く設定できるところもあったでしょう。ただ、ブラジルがラインを高く設定すると、スペインは裏を突いてきました。

 開始早々に、パウ・トーレスから高く設定された最終ラインの背後へランニングしたオヤルサバルへボールがつながり、あわやのチャンスを作りました。また、15分には右サイドのアセンシオのクロスに反応して、オヤルサバルがDFラインの背後へ抜け、あわや得点というシーンを作り出した。

 背後を空けたら走るというのはオヤルサバルがとくに見せていたので、そこはもうやるかやられるかの刺し合いで、駆け引きが行なわれていました。ブラジルは布陣をコンパクトに保つために、勇気を持って最終ラインを上げ、ビルドアップを阻害しようとしますが、それを一度超えられたら割り切ってしっかり戻ることを徹底していました。

 個人の能力に起因したライン設定によるコンパクトな布陣作り、そのコンパクトな布陣のなかでの世界トップクラスのタイトなプレスに、個人で刈り取る力。ブラジルは自分たちの武器を使った守備で、スペインの保持率を下げることに少しずつ成功していきます。

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