東京五輪の金メダルは、ブラジルが獲得した。8月7日の決勝戦は延長戦に持ち込まれ、ブラジルが2対1でスペインを退けた。
大会通算6試合目である。両チームともに消耗は激しかったはずだが、決勝戦にふさわしい攻防が繰り広げられ、戦術的にも多くの見どころが詰まっていた。
川崎フロンターレと日本代表で活躍した中村憲剛さんは、「サッカー大国によるサッカーの面白さが凝縮した戦いでした」と言う。南米と欧州を代表する大国が見せたサッカーを、技術的、戦術的、心理的側面から解きほぐしてもらった。
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ブラジルとスペインによる決勝戦。
五輪の金メダルを争うのにふさわしい、タフな戦いでした。
このゲームのポイントは「ブラジルのスペイン対策」だったと思います。スペインはボールをしっかり保持しながら自分たちの時間を増やし、相手の時間を減らしゲームの主導権を握りたいスタイルです。どこが相手でも変わらない一貫したこのスタイルは、決勝でも同じでした。
一方のブラジルも本来はボールを保持して攻めるスタイルですが、今回の相手は世界トップクラスのボール保持率を弾き出すスペインです。そのスペインを相手に決勝までのわずかな準備期間で、ここまでの激闘の疲労が残っているなかで、ブラジルがどのような対策を施したのかに個人的には注目していました。
結果的に、ここまでほとんどの試合で60パーセントを超える支配率を誇ってきたスペインは、この試合は60パーセントに届きませんでした。スペインからすればもっとボールを握りたかったはずですが、スペインにある程度ボールを持たせながらも、ゲームの最終的な主導権はブラジルにあったと思いました。そのブラジルの戦いかたを見ていきたいと思います。