■ブラジルによる「スビメンディつぶし」
試合序盤、スペインにボールを持たれるのは日本と同じでしたが、ブラジルは自陣に下がり、ブロックを作って迎え打つという選択は取らず、4-4-2のシステムでスリーラインをコンパクトに保ち、前線からプレスをかけ、最終ラインをハイラインにしてボールを奪いにいく戦いかたを選択しました。何回かプレスをかいくぐられても、前線からいこうというのはチーム内で決めていたことかもしれません。日本も守備のときは同じ4-4-2だったのですが、迎え打ちかたに両チームの違いが見えました。
今大会でスペインと対戦するチームは、彼らのビルドアップを阻害するうえで「アンカーのスビメンディをどうやって抑えるか」という課題に向き合います。その対処法はそれぞれで、ブラジルがいかに臨むかに注目していましたが、準決勝までメインで採用してきた4-2-3-1から4-4-2に変更しました。
リシャルリソンとクーニャの2トップは、自分たちの背後にポジションを取るスビメンディへのコースを消しながら、2CBに圧力をかけにいきます。ドウグラス・ルイスとギマランエスのダブルボランチは、対面のインサイドハーフのペドリとメリーノを見ながら、スビメンディにボールが入った瞬間にどちらかがインサイドハーフのマークを捨て、スビメンディを潰す機会をうかがう。スペインのビルドアップのキーマンであるスビメンディを、特定のマークをつけるのではなく、2トップとダブルボランチで挟むように前後で監視する形を取り、基本的にこの対処法で最後までやり切りました。
その対処法は前半の途中ぐらいまでは、なかなかハマらなかった印象です。しかし、18分にペドリからGKウナイ・シモンへボールが下がったときに、キックミスから敵陣の高い位置で引っ掛け、そのキックミスを受けたギマランエスからリシャルリソンに入り、ドウグラス・ルイスがシュートへ持ち込みました。この場面でブラジルは自分たちの対処法に手応えをつかみ、スペインはそのきっかけを与えてしまいました。このプレーをきっかけにブラジルの前線プレスから中盤で引っ掛ける回数が、目に見えて増えていきました。