■新スタジアムの建設で世界一観客の多いリーグに
1974年のワールドカップ西ドイツ大会は、出場16チーム、9都市の9スタジアムが舞台となった。サッカー専用だったのは前述のドルトムントだけ。他の8スタジアムはすべて陸上競技場だった。そのなかで最も新しかったのはミュンヘンのオリンピック・スタジアムで、1972年オリンピックのために建設された。ワールドカップ招致時点ではまだ30年も経っていないスタジアムである。それを「時代遅れ」として新しいスタジアムで次のワールドカップを迎えるというのである。
イングランドを中心に吹き荒れたフーリガンの影響で、1990年代のはじめ、欧州のプロサッカーは観客数が激減し、危機に瀕していた。旧式の陸上競技型のスタジアムでは、ピッチとの距離が遠く、プレーを百パーセント楽しむことができない。しかも大部分が屋根のない状態で雨や雪に耐えてサッカーを見るという時代ではなくなっていた。そこで各国が推進し始めたのが、快適で観戦しやすい総屋根のサッカー専用スタジアムの建設だった。ブンデスリーガもその必要に迫られていた。それを一挙に解決できるのが、ワールドカップの招致だった。
2006年のワールドカップは32年前の大会と比較すると巨大化し、出場は倍の32チーム。そのために12都市の12スタジアムが用意された。しかしそのうち陸上競技場形式はわずか3スタジアム。ベルリン、シュツットガルト、ニュルンベルクだけだった(シュツットガルトはその後改装されてサッカー専用スタジアムとなった)。バイエルン・ミュンヘンがミュンヘンにまったく新しい「アリアンツ・アレーナ」を建設したのをはじめ、9スタジアムがサッカー観戦を心から楽しむことができる近代的なサッカー専用スタジアムになっていたのである。
そしてベッケンバウアーの狙いどおり、ワールドカップ後のシーズンからブンデスリーガはほとんどの試合が満員になる人気を博し、その後のさらなる新スタジアム建設もあって、現在世界で最も観客の多いリーグ(2013~18の5シーズン平均で1試合平均4万3302人)となっている。