■埼玉県庁からの呼び出し
「埼玉スタジアム」は埼玉県が大宮の「大宮サッカー場(NACK5スタジアム)」に代わる県営の第1級サッカースタジアムとして建設を計画、折から日本開催(韓国との共同開催)が決まった2002年ワールドカップ決勝会場にしようと、「アジア最大のサッカー専用スタジアム」と打ち上げて建設を始めた。建設地は元来湿地であり、基盤岩が非常に深いため大変な工事だったが、本体の建設費356億円、用地買収を含む公園整備総額766億円という巨額を投じ、6万3700人収容の当時世界第一級のスタジアムが完成したのは2001年10月のことだった。
だが、このスタジアムにはデザイン設計時から大きな問題があった。メインスタンドとバックスタンドを覆う巨大な三角形の屋根がある一方、両ゴール裏のスタンドには屋根がかけられていなかったのだ。埼玉県は誇らしげに「見沼田んぼ(スタジアムがある低地一帯の旧来の呼び名)に白鷺が舞い降りた」とそのデザインを宣伝したが、浦和レッズのサポーターからは「オレたちは雨に濡れてろって言うのか」と大反発をくらった。
当時、私は日本サッカー協会の施設関係の委員会の手伝いをしていた。その立場で、建設計画がほぼまとまったころ、埼玉県庁に呼ばれた。新しい「県営サッカー場」の計画についての意見を聞きたいというのである。
私は、このスタジアムデザインは完全に間違っていると話した。