サッカースタジアムの「西高東低」問題(3) 関東大スタジアムの「共通点」と「東西の伝統」の画像
ワールドカップ予選はほとんどが埼玉スタジアム 撮影/中地拓也

みなさんはもう、新しい国立競技場を訪れただろうか。いや、西日本や九州にお住まいのサッカーファンはもう、「聖地・国立」なんて思っていないのかもしれない。なにせ、見やすい最新式のサッカー専用スタジアムが、西日本や九州地方に続々と誕生しているのだから。陸上競技場でのトラック越しのサッカー観戦で満足しているのは、関東在住のサッカーファンだけなのかもしれない。サッカー観戦環境に“西高東低”問題が発生している――。

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■東日本の大規模スタジアムは国体のために建設された

 これに対して、東日本のスタジアムの多くは、従来と同じように“官主導”で建設されている。

 たとえば、東京オリンピックのサッカー競技で使用されているスタジアムのうち、民間の活力が利用されたのは札幌市と経済界が協力して建設され、札幌市と同市財界が出資して設立された株式会社札幌ドームが運営を担っている札幌ドームだけだ。

 埼玉スタジアムは大宮市(現・さいたま市大宮区)の県営サッカースタジアム(現・NACK5スタジアム大宮=現在は市営)の建て替えとして埼玉県が建設したもので、2002年ワールドカップ決勝戦の開催を目指して当初計画を拡大して6万人規模のスタジアムとなった。

 そして、宮城スタジアム、東京スタジアム(味の素スタジアム)、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)の3つは、いずれも各都県が国民体育大会(国体)のメインスタジアムとして建設し、その時期が2002年ワールドカップと重なったため、その誘致のために大規模化されたという経緯がある(6月に女子代表の試合があった、宇都宮市のカンセキスタジアムとちぎも2022年の国体のメインスタジアムとして建設されたものだ)。

 日本の大規模なスタジアムの多くが、これまで国体のために整備されてきた。その場合、国からの助成を受けられるからである。しかし、国体のメインスタジアムであるため、いずれも陸上競技場として建設されることになる(2016年のリオデジャネイロ・オリンピックのメインスタジアムがマラカナンであったように、国体のメインスタジアムがサッカー専用であってもいいのだろうが、自治体にそんな発想はないし、自治体には陸上競技連盟の影響力が強いのでメインスタジアムとしてサッカー場が建設されることは事実上ありえない)。

 また、“官主導”のスタジアム、とくに公園法の枠内で建設されるスタジアムの場合、スタンド下のスペースを商業利用することが難しいという問題もある。

 東日本にサッカー専用スタジアムが少ないのは、つまり西日本では民間資金を活用し、民間企業に運営を委託する方式が浸透しているのに対して、東日本では“官主導”でスタジアムが建設されているからなのである。

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