■敢えて動かない「森保采配」

 いずれにせよ、大会直前に出来ることは限られている。最後の1週間や2週間のトレーニングで個人技が急にうまくなるわけはないし、急に足が速くなることも、身長が伸びることもない。できることは、コンビネーションの精度を上げること。そして、大会に合わせてコンディションをピークに持っていくことだ。

 ワールドカップの場合は開催期間が5週間近くあるため(2022年のカタール大会は、11月開催となったため28日間に短縮)、コンディションのピークをどこに持っていくかは(強豪チームにとって)難しい問題となる。

 開幕時に100%であったら、それを5週間維持することは不可能だからだ。グループリーグ突破が目標のチームなら間違いなく開幕にピークを持っていくべきだが、優勝を狙うチームにとってグループリーグは調整を兼ねた試合であり、決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)か準々決勝あたりに照準を合わせることになる(だから、グループリーグで番狂わせが起こるのだ)。

 だが、オリンピックは2週間半。男子も女子も初戦から決勝戦までは17日しかないのだ。これなら、開幕に照準を合わせてコンディションを上げても、なんとかやり繰りし、リカバリーを行うことによってコンディションを決勝まで保つことが可能になる。だから、オリンピックの場合、どこの国でもピークは開幕戦に合わせて調整する。

 Uー24日本代表も7月22日の南アフリカとの開幕戦にピークを合わせるしかない。2戦目、3戦目がメキシコやフランスと勝点計算が不可能なチームなので、南アフリカ戦ではどうしても勝点3を取りたいところであり、そのためにも開幕に100%のコンディションに持っていくべきだ。

 とすれば、開幕戦まで10日という7月12日にコンディションが良いはずなない。2006年のドイツ・ワールドカップの時、日本代表は事前のドイツとの調整試合に合わせてピークを作ってしまい、大会が始まったころにはコンディションが低下していた。

 だから、今の時点で90分間素晴らしいプレーが続かないことも、後半にフレッシュな選手を入れてきたホンジュラスにデュエルで負けて押しこまれる時間があることも、すべては森保一監督にとっては想定内、織り込み済みのことだった。

 そんな中、ハーフタイムに相手が5人もの選手を代え、61分にはさらに2人が交代するのを見ても、森保監督は動かなかった。厳しい条件の中で選手たちのパフォーマンスがどれだけ落ちるのか、そして、そんな中で選手たちがどのように反応するかを見ておきたかったのだろう。

 森保監督にとって、ホンジュラス戦は様々なテストのための試合なのだ。

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