■さまざまな世界選手権の日本での開催を
ただ、今回非常に残念なのは、海外からの観戦客をまったく受け入れられないことだ。宿泊や観光などの業界が打撃を受けるからではない。ワールドカップやオリンピックは、世界の人びとが短期間にそして大量に直接交流する絶好の機会であるからだ。2018年のワールドカップでは、大会に訪れた日本人の多くが、ロシアの人びとの親切やホスピタリティーに感激し、大好きになってしまった。「ロシア」という国のイメージが180度ひっくり返った人も少なくなかった。
そうした交流がないオリンピックは、IOCの収入にはまったく影響を及ぼさなくても、その理念(IOCはそんなものがまだ生きていると思っているだろうか?)の実現には、大きなダメージだ。今回のオリンピックは、将来、どんな大会として記憶されていくのだろうか。
ここでまた、私は牛木さんの言葉を思い出す。コロナ禍が終息し、世界が再び自由に行き来できる時代になったら、さまざまな競技の世界選手権を日本に招致するのだ。サッカーのワールドカップなどどうでもいい。マイナーな競技を中心に、日本の各地で開催し、アスリートやサポーターを地域を挙げて歓待するのである。
何千億をかけた施設などいらない。しかしそれぞれの競技をフルに楽しむことができるような施設を残し、その地域がその競技における日本の「メッカ」になるようになれば、日本は本物の「スポーツ国」になり、同時に世界とのつながりも、もっともっと深いものにできるのではないだろうか。