日本女子サッカーの「新しい息吹」(2)「なでしこの本流」ベレーザが世界の潮流を変えたの画像
なでしこジャパン 撮影/渡辺航滋(SONY α9Ⅱ使用)
※第1回はこちらから

はたして東京オリンピックで好成績を収めて、満を持して始まる「WEリーグ」に勢いをもたらすことができるのか。メンバーが発表された「なでしこジャパン」に注目が集まっている。東京オリンピック代表は、長らく女子サッカーを牽引してきたテクニック重視のベレーザ色の濃いチームとなった。一方で、目を転じれば、ダイナミックなサッカーを指向する新しい勢力が台頭してきているのがわかる。2021年なでしこリーグ1部はすでに第12節を迎えている。

■ベレーザは徹底的にテクニックにこだわる

「ベレーザ中心の」というのは、単にベレーザ所属(もしくはベレーザ育ち)の選手が多いというだけの意味ではない。高倉監督がベレーザの(あるいは「東京ヴェルディの」、あるいは「読売サッカークラブの」)「テクニックこそがすべてに優先する」という思想に基づいたサッカーを目指しているということを意味する。

 1969年に将来のサッカー・プロ化という構想を持って結成された読売サッカークラブ。その後、ブラジル人選手の先駆としてジョージ与那城が来日し、さらにルイ・ラモス・ソブリーニョ(後のラモス瑠偉)などブラジル人選手が多数在籍。クラブ育ちの戸塚哲也や都並敏史といった日本代表選手を輩出し、1980年代からJリーグ発足の頃まではまさに日本のサッカーをリードするような存在だった。

 1960年代、70年代に当時の日本サッカー界の主流であった実業団チームとはまったく異なったブラジル的なテクニックのサッカーを引っ提げて当時のトップリーグだった日本サッカーリーグ(JSL)に挑戦した読売クラブはまさに一世を風靡したものだった。

 そのスタイルはブラジル的な(古典的な)テクニックを生かしたサッカー。個人技を生かしての中央突破こそが読売クラブの代名詞のようなものだった。その女子部門として誕生したベレーザも、男子と同様にテクニックのサッカーに徹底してこだわってきた。

 そして、その育成部門は現在も健在。男子の東京ヴェルディは今ではJ2リーグにすっかり定着してしまったが、それでも多くの優秀な選手を育て続けている。女子部門の下部組織(メニーナ)からも数多くの名選手が育ち、ベレーザは日本の女子サッカー界をリードする存在であり、そして東京オリンピックの代表にも多くの選手を送り込むことになった。

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