【UEFA EURO2020 グループF第1節 フランスvsドイツ 2021年6月15日(日本時間28:00キックオフ)】
フランスのMFポール・ポグバには、試合によって異なる印象を与えられる。
ある時はダイナミックな前進と豪快なミドルシュートが持ち味の選手、ある時は冷静にシンプルな繋ぎとサイドチェンジでゲームを組み立てる選手、ある時は優れたポジショニングで守備で効いている選手……しかし、オールラウンダーという言葉はどこか違う。そんな様々な顔を見せる選手だ。
手詰まりな時はダイナミックに、自分が目立つ必要がない時はシンプルに、と周りの様子でプレーを選択することが可能なのは、試合状況を把握する力に長けているからだ。
ドイツがボールを持つことになったこの試合では、それが顕著に表れた。
攻撃では20分、2人に挟まれながらスローインを受けたポグバは、短いパス交換からふわりとしたボールをペナルティエリアの奥へ対角線に送る。そのボールは優しいものだったが、コースも高さもディフェンダーには届かない意表を突くものであり、同時にリュカ・エルナンデスが後方から駆け上がってくる時間を稼ぐものでもあった。
たった7秒間に、強いフィジカルと視野の広さ、空間把握能力、正確無比な優しいパスを蹴る技術の高さが凝縮されていた。エルナンデスがダイレクトで折り返したボールは、後ろ向きで慌てた対応をするしかなかったマッツ・フンメルスの足に当たりオウンゴールになった。