■分かっていたパワープレー
そんな展開で、セットプレー2発でスコアを動かしたのは“さすが王者”というべきものだったが、逃げ切ることはできなかった。87分にキャスパー・ユンカーに得点を許すと、94分に槙野智章に痛恨の同点ゴールを許してしまったのだ。勝ち上がりのカップ戦で、ビハインドのチームが終盤にパワープレーを仕掛けてくるのは当然のこと。92分に槙野が途中出場した時点で、空中戦に強いこのセンターバックが前線に陣取ることは想像ができたはずだ。
しかし、川崎には守備に強い選手を入れることはその時点でできなかった。交代カードは1つ残っていたが、相次ぐ負傷者によって戦術的自由度は狭められていた。同点にされたあと、わずかな望みを託して攻撃選手を交代させるという方法もあったかもしれないが、ベンチ入りした新加入のマルシーニョはチームに合流したばかり。しかも、試合からは遠ざかっている。鬼木監督も慎重になったはずだ。
最終ラインの安定にカードを使わなければ、あるいは、ベンチメンバーにもう少しの余裕があれば、試合展開はどうなっていたか分からない。しかし、それは“たられば”だ。
このルヴァン杯敗退は、「4冠」というチームの目標を絶つものとなった。残り「3冠」に懸けるしかないが、川崎は今、正念場を迎えようとしている。そしてその“危険な前兆”は、すでに表れている。