大住良之の「この世界のコーナーエリアから」連載第61回「サッカーからヘディングがなくなったら」(2) ヘディングがシェフィールドで生まれた理由の画像
ゴール前での攻防も様変わりする 撮影/中地拓也
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日本代表FWの巻誠一郎は「利き足は頭です」と語った。足元は不器用だったが、腰より下の低いクロスもヘディングでゴールに叩き込み、名将イビチャ・オシムに愛された。同じく岡崎慎司の座右の銘は「一生ダイビングヘッド」。プレミアリーグ優勝を遂げたレスターシティーFCでの入団初得点もダイビングヘッドによるゴールだった。しかし、ヘディングが脳に与えるダメージが医学界からたびたび指摘されるようになっている。サッカー側もこの問題と向き合う覚悟を決めなければならない。ヘディングのないサッカー……。ありえる? ありえない?

■ヘディングを禁止されたらサッカーはどうなる?

「ヘッドギア」という手段がある。チェコ代表選手でイングランドのチェルシーなどで活躍したGKのペトル・チェフが、2006年のプレミアリーグでの試合中にペナルティーエリアにこぼれてきたボールを倒れながらキャッチした直後、走り込んできた相手FWと激しくぶつかり、頭蓋骨の陥没骨折という重傷を負った。幸い一命をとりとめ、「復帰まで1年」と診断されながら3カ月で復帰したが、以後、彼はラグビー用のヘッドギア(ヘッドガード)をつけ、2019年の引退までその姿のままプレーした。

 5月14日付けの朝日新聞の記事によれば、日本全国で子どものスクールを開講している「クーバー・コーチング」では生徒約2万人にヘッドガードを着用させて練習しているという。近い将来的に年少者のサッカーではヘッドガードが一般的になり、プロでも着用してプレーする選手が増加していくかもしれない。

 だが、ヘディングによる脳の損傷やバッティング(頭同士の衝突)による脳振とうを防ぐ根本的な方法は、ヘディングの禁止しかないのではないだろうか。そしてもしヘディングが禁止されたらサッカーはどうなるのだろうか――。

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