■都市型スタジアムでのさまざまな空間活用

 こうして、各地に新スタジアムが完成しており、いずれ新型コロナウイルス感染症が収束すれば観戦環境の改善による観客動員数の伸びも期待していいだろう。観客数が増加すれば、入場料収入やスポンサー料も増加し、クラブ経営にとっても明るい材料となる。

 今後の課題は都市型の専用スタジアムとしてスタジアムをどのように活用していくかというソフト面での工夫であろう。

 最近のヨーロッパの(あるいはアメリカの)都市型スタジアムでは、スタンド下の空間がさまざまな用途に利用されるようになっている。昨年、日本代表が親善試合を行ったオランダ・ユトレヒトのハルヘンワールト・スタジアムが1982年に全面改装された当時、コーナー付近に小さなオフィスビルを設けたことで注目を集めたが、今ではそうした構造は当たり前のこととなっており、スタンド下にはショッピングモールや映画館、会議場、ホテルなどを併設することが一般的になっている。

 こうした施設は試合のない日でも市民が集まるコミュニティーの交流の場になるので社会的な意味を持つし、また試合のない日でもスタジアムから収入が生まれるのだ。

 日本では、スタジアムの多くが公園法という法律に則って建設されていることもあって、スタジアムの商業利用は進んでいないが、「サンガスタジアム」ではスタンド下がスポーツショップやイベント会場として利用されている。

 川崎フロンターレといえばアイディア溢れるファンサービスを駆使して「地域密着」を実現してきたクラブだ。新スタジアム完成後はスタジアムの指定管理者となって、所有者である川崎市とも連携して、スタジアムをコミュニティーの中核とするためにうまく活用していってほしいものである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3