■基本に忠実でぶれないシュートテクニック

 CK後のクリアを拾った西は、誰を狙うでもなく、ワンタッチでゴール前の人の密集に向かって無造作にけり込んだ。昔のサッカーにはこうしたいわばいいかげんなキックも多かったが、最近のJリーグではあまり見ることのない「アバウトさ」だった。そのとき、CKに合わせて右ポスト前まではいりこんでしまっていたユンカーは、オフサイドにならないよう、戻ろうとしていたところだった。

 ボールの落下点には浦和の岩波拓也と神戸の菊池流帆。懸命にジャンプしたが、はいりこみ過ぎた岩波に菊池が影響を受け、ふたりともボールに触れることができない。その左に戻っていたユンカーは、ワンバウンドして高く上がるボールを追いながら、落ちきる少し手前のポイントで左足を振り、ボレーシュート。しかしそれは足を振り抜くという形のボレーではなかった。ボールのやや上から叩きつけ、左足はそのままグラウンド上で止まった。ボールはワンバウンドし、倒れ込んだ神戸GK飯倉大樹の上を越えてゴールに吸い込まれた。

 ルヴァンカップを含めてユンカーが決めた6ゴールのなかには、サイドからのシュート性のクロスにゴール前で合わせて流し込んだものが2つある。G大阪戦の2点目(右からのクロス)、そして広島戦の1点(左からのクロス)である。右からのクロスには左足のインサイドで合わせ、左からのクロスには、左利きながらごく自然に右足が出てそのインサイドで押し込んだ。

 当たり前と思うかもしれないが、シュートテクニックとしては非常に重要なポイントだ。Jリーグの試合を見ていると、右からのクロスに合わせようと右足を振り回してミスキックする選手が必ずいる。ボールが体より後ろにきてしまったら右足でプレーするしかないが、体より前なら左足のインサイドで「面」をつくってミートするのが基本中の基本だ。その基本を教えられておらず、決定的なチャンスを逃すことが、日本人ストライカーには少なくない。ユンカーはこうした基本にまったくブレがない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4