■森保監督の口調が変わった瞬間
そのサムライブルーの指揮官の顔がやや強張り、口調が強さと早さを増した瞬間があった。U-24代表のオーバーエイジ枠について語った時である。
「今後の活動に向けて、そして選手個々のメンタルに支障をきたさないように、リスペクトを持って選手たちのことを見させてもらわないといけないということで、このタイミングでの発表となりました」
オーバーエイジ枠については、すべてのポジションにおいて候補をリストアップしていたという。その上で吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航という、これまでの経験や能力でピッチ内外で好影響をもたらす3人を選出したと説明した。
オーバーエイジ候補には、本人や所属クラブの意向もしっかり確認していたという。その中から3人が選ばれたわけだが、言い換えるとその他の選手は見送られたということだ。
選外とする作業は、まだ続く。OAが入ったということは、五輪に出られる枠が3つ埋まった、ということだ。東京五輪のメンバーは18人と、ただでさえ通常の大会より少なくなっている。これまで多くの東京五輪世代が招集されてきたが、そうした選手たちが狙う門がさらに狭くなったのだ。
不測の事態に備えて予備のリストはあるというが、ここから新たに選手が加わる可能性は低い。五輪本番に向けてはピックアップではなく、外す作業がメインになる。今回のU-24で、OA以外の選手は24人。その選手たちのうち、少なくとも9人は一生に一度の大舞台を諦めなければならない。
ワールドカップ(W杯)で2度の指揮を執った岡田武史元日本代表監督は、かつて「監督の仕事とは決断すること」と語った。フランスW杯で功労者のカズ(三浦知良)と北澤豪を外さざるを得ず、南アフリカW杯ではスタメンをガラリと変更するという、大会直前の大きな決断を迫られた男の言葉だ。
代表監督として初めて「本番」を前にした決断の重さを、森保監督も感じたのかもしれない。