世界大会出場を勝ち取った「もう一つの日本代表」 eスポーツの現在地(2) リアルサッカーと変わらない代表戦の重みの画像
選手たちは力を合わせて重圧とも戦った 写真提供:JFA

 日本代表が、世界大会出場を勝ち取った。ワールドカップへの出場ではない。ピッチの上の話でもない。だが、れっきとした日本代表、e日本代表が成し遂げた快挙だ。

 まさに初陣だった。日本サッカー協会(JFA)が初めて選出した「e日本代表」が今年4月、当然JFAの歴史上で初となる公式戦を戦った。国際サッカー連盟(FIFA)が主催する、eスポーツ版のワールドカップとも言える国別対抗戦「FIFAe Nations Cup」の出場権を争うアジア・オセアニア地区予選に臨んだのだ。

 初めて日本代表として戦いに挑んだ選手たちの戦いぶり、そして言動からは、eスポーツの現状が浮かび上がってきた。

■前回の記事「日韓戦の重みを感じたJFAスタッフの一言」は、こちらから■

■息詰まる韓国との準決勝

 韓国との準決勝は、まさに緊張感あふれる展開となった。開始10分で日本が先制するが、30分には韓国が追いつく。それでも5分後には日本が再びリードした。それまでのパスワークではなく、ゴール前でドリブルにダブルタッチと個人技を前面に押し出してゴールネットを揺らしたのだ。リードして前半を終えるとAguはタオルで顔の汗をぬぐい、JFAのスタッフは拍手を贈った。

 苦しい展開は後半も続いた。日本は後半開始5分で再び追いつかれ、韓国に押される時間が長くなる。70分過ぎには選手交代などで打開を図るが、2-2のままで90分を終了。延長戦へと突入した。

 延長に入り98分、この試合で初めての事態が起こる。縦パスでオフサイドトラップを破られ、ついに韓国に勝ち越しを許したのだ。

 延長後半に入る前、Aguが戦術の調整を施すと、それが奏功して高い位置でボールを奪ってゴールに近づくシーンがあった。すると112分には、日本の前線に人数をかけた攻撃が実って同点ゴール。延長に入ってからも点を取り合って3-3という、見ている側にはエキサイティングな、プレーしている側にはスリリング過ぎるゲームとなった。

 スコアはそれ以上動くことはなく、PK戦へ突入。XboxでほとんどプレーしたことがなかったというAguにとっては、懸命に戦った結果だったかもしれない。だが、最後に笑ったのは韓国。PK戦を制して、1勝目を手にした。

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