■女子サッカーの新しい動き

 そして、重要なことは、これは単に代表チームの狙いということではなく、日本の女子サッカー全体がフィジカルやスピードを重視する方向に変わってきているのだ。

 日本の女子サッカーは、かつての読売サッカークラブの女子部門「ベレーザ」、現在の日テレ・東京ヴェルディベレーザが長年リードしてきた。ここ数年を見ても、ベレーザは2015年から2019年まで女子のトップリーグだった「なでしこリーグ」で5連覇を達成している。そのベレーザが追い求めるサッカーは、テクニックを重視し、テクニックのある選手たちが美しいパスをつないで攻撃するサッカーだった。

 つまり、2011年に世界の賞賛を集めたなでしこジャパンとは、すなわちベレーザのサッカーだったわけだ。

 ところが、2020年シーズンに、ベレーザはついになでしこリーグで優勝を逃して3位に終わってしまった。

 ベレーザに代わって女王の座に就いたのは浦和レッズレディース(今シーズンから三菱重工浦和レッズレディース)だった。

 現在のベレーザの基礎を築いた森栄次が2019年に浦和の監督に就任して、それ以降、ベレーザと浦和が激しい競り合いを行っており、両チームの直接対決では毎回のように素晴らしい内容の試合が繰り広げられている。2020年のなでしこリーグでは1勝1敗だったが、浦和がベレーザを破った試合は浦和の完勝だった。

 森監督が作り上げた浦和のサッカーは、サイズが大きく、フィジカル的に優れた選手をそろえたダイナミックなサッカーだ。たとえば、右サイドバックにはFWから転向した清家貴子が入り、力強いドリブルが大きな武器になっているし、MFでも今回のなでしこジャパンにも追加招集された塩越柚歩は166センチの長身だ。浦和レディースのサッカーは、これまでのベレーザのサッカーとは明らかにテイストの違いがあるのだ。

※第3回につづく

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