【日本代表】「BLUE IMPULSE」田中碧の衝撃(2)連想するのはトニ・クロース「成熟したゲームメーカー」の画像
田中碧 写真/サッカー批評編集部

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田中碧を見るのなら、いまのうちにスタジアムに足を運んだほうがいい。そう思わせるほど、U-24アルゼンチン戦でのプレーは充実していた。もはやJリーグのレベルではないだろう。中盤に君臨する、優雅で成熟したコンダクターぶりをぜひ、目に焼き付けておかなければ。海外に飛び出して、世界のトップリーグで輝きを放ちはじめる前に。

■試合前、期待は高まる一方だった

 田中を見ながら私が連想したのは、ドイツ代表レアル・マドリードで活躍するトニ・クロースだった。ボールを奪い、試合を展開してチームの攻撃をオーガナイズし、リズムをつくるクロースもまた、チャンスと見れば相手ペナルティーエリアまで進出し、決定的なシュートを放つ。

 リオネル・メッシクリスティアーノ・ロナウドのような派手な働きをするわけではないが、走り、戦うことを惜しまず、チームをひとつの方向にまとめるクロースのような選手を、世界中のどんな監督も探し求めている。しかしこうした選手は、卓越したストライカーと同様、簡単に見つかるものではない。その有力な候補のひとりが、いま、フロンターレの背番号25をつけてプレーしているのだ。

 だが、私は慎重にならければならないと考えた。現在のフロンターレが、Jリーグのレベルから突出してしまっているからだ。サッカーはあくまでチームゲームであり、原則として個々の選手のパフォーマンスはチームのパフォーマンスに規定される。どんな大きな才能でも、チームが機能していないときに力を発揮することはできない。同時に、チームが圧倒的な優位にあるときには、どんな選手も実力以上に光って見えるものだ。

 そうした小さなクエスチョンマークを払拭したのが、3月29日の北九州でのアルゼンチン戦だった。東京での第1戦、田中は出場停止で出られなかった。昨年1月のあの不可解な退場処分のペナルティーだった。アルゼンチンとの力の差を見せつけられるような試合で0-1の敗戦。第2戦は、そこで学んだもの、反省点をどう生かせるかが見ものだったが、何よりも、ベンチにもはいれなかった悔しさを、田中がどういったプレーで表現するのか、非常に楽しみな試合でもあった。

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