■ディエゴほど撮影して楽しい選手はいなかった

 帰りかけると、ディエゴが呼んでいる。何かと思うと、笑っているディエゴの手にはフィルムのロールがあった。

「これは忘れちゃダメだろう」

 私はポケットから撮影済みのフィルムを落としていたのだった。

 ディエゴ・マラドーナくらい撮影していて楽しかった選手はいない。マラドーナだけを撮っていれば、試合の流れは完結したような気持になれた。

 私の中では、クリスチャーノ・ロナウドもリオネル・メッシもディエゴ・マラドーナの存在感を超えることはできない。

 東京スタジアムの冷たい風が吹くピッチでは試合が進んでいた。

 オリンピックを前に久保建英三好康児三笘薫菅原由勢らがアルゼンチンと戦っていた。

「永遠の10番」もそんな彼らの姿を見ていたかもしれない。

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