■左サイドバックは”偶然”の起用

 その旗手が、次第に中盤でも出場機会を増やす。過密日程の中で負傷者が出るなど、インサイドハーフの枚数が薄くなっていたからだ。ここに、旗手の強みがある。

 旗手の特徴というと真っ先に「ドリブル」が挙がるが、実際には最大の武器は戦術理解度だ。チームの中で何を求められて、今、どこに動けばいいかが分かる。だから、プロ1年目ながら川崎フロンターレで早い段階で出場機会を掴むことができた。ウイングだけでなくインサイドハーフで起用されたのも、ボールを受ける位置や守備面でのタスクをこなすことができるからだ。

 そしてリーグ終盤に不動の左サイドバックだったDF登里享平が離脱を余儀なくされる。さらに、その登里とポジションを争っていた車屋紳太郎も負傷。本職の選手がいなくなった中で左サイドバックに起用されたのが、旗手だった。2020シーズンの天皇杯を制した川崎だが、優勝までの道程で左サイドバックを旗手は務め、タイトルを得た。

 2020年シーズンの旗手の成績は31試合出場5得点。そして今季は、全7試合に出場して2得点。出場時間は、フル出場しているGKチョン・ソンリョンとDF山根視来よりわずかに「1分」少ない629分。川崎にとって欠かせないピースとなりつつある。

 旗手の左サイドバック像は、普通のそれとは異なる。その型破りなプレースタイルは、小林悠家長昭博といった川崎の先輩の影響を色濃く受けている。


※その2に続く
PHOTO GALLERY ■【画像】川崎フロンターレ・旗手怜央のプレー写真全15枚■
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