■理念墨守と同時に柔軟性も必要では
ライセンス審査を厳格にしてリーグの健全発展を目指すのか、そのあたりは柔軟に対応してリーグの競技力向上や人気回復を目指すのか……。今のFリーグは、まず、リーグの存続が至上命題になるはず。それだけに、トルエーラ柏のF1昇格については柔軟に考えるべきだったような気がするのである。
同様のことは、2021年の秋に開幕予定の女子プロサッカーリーグ「.WEリーグ」についても言える。WEリーグは「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」との理念を掲げ、「女性参画」を目指している。女性の岡島喜久子氏が代表理事(チェア)に就任し、各クラブの理事にも女性を登用し、さらには監督も女子監督を推奨しているという話も聞く。
たしかに、「多様性」とか「女性参画」という理念はとても大事なことだ。しかし、それよりも前に、いや同時に、プロ・リーグとして成功するためにはまず競技力向上や集客、スポンサー集めも必要になるはずだ。理念を優先させることによって、リーグ存続が危ぶまれるようになってしまっては元も子もないのだ。
たとえば、試合の質を上げるためにはチーム力の向上が急務だが、それには女性監督の登用よりも、Jリーグのトップの監督を経験した男性監督を起用するのが近道だろう。
1990年代前半にJリーグが発足した時、「地域密着」などの理念が声高に叫ばれたが、同時に川淵三郎氏など当時の指導者たちはリーグを経営的に成功させるために、様々な努力をしていたはずだ。Fリーグの例でも、WEリーグの例でも、どうも理念先行が過ぎるような気がしてならないのである。