■メッシの存在
2003年の会長選において、ラポルタはデイビッド・ベッカムの獲得を公約に掲げていた。最終的にはベッカムを獲得したのはレアル・マドリーだった。バルセロナはやむなくロナウジーニョ獲得に舵を切り替えた。そのロナウジーニョが大活躍して2006年にチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げた。そういう意味で、ラポルタは「持っている男」なのかも知れない。
しかしながら、現在、バルセロナに必要なのは大型補強ではない。
コロナ禍で財政は圧迫されている。なにより、エースであるリオネル・メッシの去就が数カ月前からバルセロニタの大きな関心事になっている。
今回の選挙で、もうひとつ注目されたのが、メッシの出席だ。メッシはバルセロナに移住してから、初めて会長選でソシオとしての一票を投じた。
「いまから20年前に一人の少年がバルセロナのカンテラでデビューした。彼が息子を連れて投票に参加したというのは、バルセロナ愛の証明だ。世界一の選手が、バルサを愛している。それが未来に向けた決断に影響を及ぼし、メッシが我々と一緒に続けてくれることを願っている」
ラポルタは、そう、語った。
今回の会長選に出席したのはメッシだけではない。セルヒオ・ブスケッツ、セルジ・ロベルト、ジョルディ・アルバ、リキ・プッチ、ルイス・エンリケ監督らが投票に参加した。
「将来のバルサがどうなるか。そのメッセージは発信された。私は労働者として働き続けなければいけない。(ラポルタの当選が)正しかったことを願う。難しい状況だ。我々は一致団結しなければいけない」とフォンが語れば、「バルセロニスモをまとめなければいけない。この状況を乗り越えるために。最重要なのはバルサだ」とトニ・フレイシャが続いた。
会長選で敗れた者たちが言うように、簡単な状況ではない。コロナ禍で財政は厳しい。バルセロナには11億7300万ユーロ(約1400億円)の負債があるといわれている。
そして今季のバルセロナはタイトルレースにおいて苦しんでいる。チャンピオンズリーグではパリ・サンジェルマンに敗れてベスト16敗退が決定。リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイを含めた主要3大会で無冠に終わる可能性もある。会長が決まったとはいえ、問題が解決したわけではない。これからが、始まりなのだ。