■ネットの取り付けも選手の仕事
ちなみに、現在ではその「深さ」は2メートル程度が常識だが、「ギネスもの」の深さをもつゴールネットとして有名なのが、スペインのレアル・サラゴサ・クラブがホームとする「ラ・ロマレダ」スタジアムである。1982年のワールドカップでも使われたこのスタジアムのゴールは、なんと4メートルもの「深さ」がある。ゴールを許したGKにとって、このスタジアムほど、ボールを拾いにいくのがいやなところはないだろう。
現在、トップクラスで使われるスタジアムのゴールは基本的にゴールポストとバーだけで構成されており、ピッチに埋め込む形になっているので、Jリーグの「スタジアム基準」に見るように、ゴールの後方にポールを立ててそこからネットを引っ張り、「深さを」を出すようになっている。しかし一般に使われている「据え置き型ゴール」には、ゴール後方に「支柱」があり、ネットはゴールポストとバー、そして支柱を包み込むように取り付ける。
サッカーを何十年間やっていても、ゴールネットの取り付けなどやったことがないという人もいるかもしれない。練習場も試合場も、ゴールはネットを取り付けたまま置かれている場合が多いからだ。しかしどういうわけか、私が監督をする女子チームが練習のために借りるグラウンドは野球との併用型が多く、たいていの場合、ゴール置き場からゴールを運び、そこにネットを張って、そして立てるという作業を強いられる。
ゴールはアルミ製でも100キロ以上ある。まずそれをゴールラインの中央まで運び、ポストとバーを下にして寝かせる。次に用具置き場からかかえてきたネットを張るのだが、「進撃の巨人」でもない限りゴールを寝かせた状態で一気にふわっとかぶせることなどできない。まずネットの上下を見極めて上部をバーの内側の取り付けフックにかけ、サイドネットを支柱の外から回してポストに取り付ける。そうしてしっかり取り付けた後に、「せいのっ!」と声をかけてゴールを立たせるのである。