■アトレティコが警戒したもうひとつのポイント
もうひとつ、アトレティコが警戒していたポイントがある。センターFWのカリム・ベンゼマである。37分の場面が印象的だった。くさびのパスを受けるベンゼマにCBのフェリペが食らいついたのだが、ボールをはたいた後も、ベンゼマを離さない。普通ならば最終ラインに戻るところを、ポジションを求めて動くベンゼマに並走していった。結果、レアルの攻撃はシュートに到達しなかった。
後半に入っても、アトレティコのビッグチャンスにはカラスコが絡み続けていた。最初にシメオネ監督が投入したサウールは、まずは中盤中央、そしてカラスコが退いた後にはサイドへ移り、運動量を注入していく。74分にカウンターを受けた場面では、サウールは相手ゴール前から猛ダッシュで自陣へ戻り、反撃を抑えることに成功。最後のカードとしてジョフリー・コンドグビアを投入し、シメオネ監督の策は完結したかに思われた。
シメオネ監督の見立ては正しかった。やはり、ベンゼマは要注意人物だった。このストライカーに、ストーリーを台無しにされたのだ。
アトレティコのベンゼマへの警戒は続いていた。ベンゼマへのくさびには厳重に対応し、78分の場面では、ハーフウェイライン付近でコケが激しく寄せてスライディングし、ボールを弾き返していた。
ただしその場面、レアルのプレーはシュートで終わっている。ルーズボールを拾ってから速い攻撃に移り、GK正面でのシュートにまでつなげているのである。そして、その一撃を放ったのは、まずは相手の目を引かぬようにひっそりと、次いで猛然とダッシュに移ったベンゼマだった。