このエヴァートン戦でギュンドアンが不在だったことで、シティのキー・プレイヤーがジョアン・カンセロであることが、かえって浮き彫りになった。ペップの思想を具現化するポルトガル代表SBは、この試合でも“カンセロ・ロール”を披露。偽SBの範疇を超え、ロドリの隣でボランチとしてプレーするだけでなく、ボックスの手前でインサイドハーフとして攻撃に厚みを持たせた。
タッチラインをSBとして上がることもあれば、試合の終盤には、シウバとフォーデンを前にトップ下のようなポジションも取っている。仮にカンセロを欠くようなことがあれば、シティのポゼッションの質はガラリと変わってしまうだろう。
話は逸れるが、この“カンセロ・ロール”を日本代表のサッカーに導入してみても面白いのではないだろうか。目下、日本代表の左SBのポジションは長友佑都の後釜を探しているところだが、昨年10月のカメルーン戦では安西幸輝が、コートジボワール戦では中山雄太が先発。11月のパナマ戦は3バックだったが、再び4バックのメキシコ戦では中山が先発した
そもそも中山はボランチの選手であり、“カンセロ・ロール”を託してみても面白い。そうすれば、遠藤航をワンボランチに置く[4-1-2-3]の布陣を試すことができる。もしくは、中山か他の誰かをワンボランチにおいて、遠藤に託してみる。
シティではSBが本職のカンセロがこなしているが、重要なことはポジショニングとパスのセンスであって、本職がSBである必要はないだろう。そもそもペップのサッカーには本職も何もない。むしろ本職がボランチだからこそ、遠藤と中山に“カンセロ・ロール”の適性はあるとも言える。
もちろんペップの戦術を模倣することは簡単ではないし、日本代表が“カンセロ・ロール”を使えるのは、力関係で優位に立てるアジアのチームに限られるだろう。しかし、相手が引いてくることも予想されるW杯アジア予選を戦う上でのオプションとして、一考の価値もあるのではないか。全く機能しない可能性もあるが、得点力不足改善の劇薬になる可能性もある。