こうした膠着状態を打ち破ったのが、ヴェルナーだ。昨夏、RBライプツィヒから4750万ポンド(約64億円)の移籍金で加入したドイツ代表FWは、左サイドでコバチッチから受けたパスを戻すと、前方に走り出す。そしてコバチッチ→ベン・チルウェルと経由して出てきたボールに合わせて左サイドを抉ると、マイナスに折り返す。そこには、フリーのメイソン・マウントがいた。

 シェフィールドの守備の一瞬の隙を突いた生え抜きのイングランド代表MFは、左足を振りぬいて先制点を奪う。もちろん最初にコバチッチからパスを受けた時点のポジショニングが効果的だったこともあるが、何よりヴェルナーのスプリントが、固い守備に穴を空けた。

 高額の移籍金で加入したにもかかわらず、リーグ戦で4ゴールに留まっているドイツ代表FWに対しては、現地で批判の声もあるという。だがトゥヘル新監督は、同じドイツ人としてヴェルナーの特徴を熟知していることもあってか、決して悩めるアタッカーを見限るようなことはせず、その長所=スピードを活かせるポジションを見出そうとしている。

 現地『スカイ・スポーツ』に語ったところでは、トゥヘル監督はやや左サイドにヴェルナーの適性を見ているようだが、シェフィールド戦ではその考え方が上手くハマったと言えるだろう。

 もっとも、ペップ・グアルディオラに多大な影響を受けたドイツ人監督は、ドルトムント時代、それまで主にサイドハーフでプレーしていたピエール=エメリク・オーバメヤンをセンターFWにコンバートしたこともあるので、今後ヴェルナーが完全なワントップのポジションに入る可能性もある。いずれにせよ、同国のトゥヘル監督の指導の下で、ヴェルナーはいよいよ本領を発揮し始めるのかもしれない。

 韋駄天のドイツ人アタッカーは、56分には右サイドでバックパスをかっさらい、そのスピードでPKを獲得。直前のアントニオ・リュディガーのオウンゴールを帳消しにする仕事をした。このチャンスをジョルジーニョがきっちり決めて、チェルシーが勝ち越しに成功。その後も抵抗するシェフィールドを振り切って、2-1で勝利した。これでトゥヘル体制になって負けなし、3連勝である。その結果、5位に浮上。

 4位以内も視界に入ってきたが、ヴェルナーの足が、来季チャンピオンズリーグの出場権獲得のカギを握っているのかもしれない。

 

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