パリで共に戦っていたディフェンスリーダーのチアゴ・シウバの存在は大きかった。これによって最終ラインは新しいチームのやり方に順応できた。さらに、アントニオ・リュディガーが完全にフレッシュな状態だったこともプラスになった。
ランパード監督時代は4-1-2-3が多かったが、トゥヘル監督は3-4-2-1を採用している。「2-1」の前線は「3」で慣れている組み合わせをそのままにしつつ、カラム・ハドソン=オドイを右ウイングバックとして起用する、というサプライズを見せた。ただし、フォーメーション上はウイングバックだが、ハドソン=オドイにはラインを破って裏を突く動きが託された。後ろにセサル・アスピリクエタを配することで、守備を心配せずに攻撃で良さを発揮できるようにしたことがポイントだ。
さらに、ここまでの2試合で、フランク・ランパード前監督のチームの特徴であったアンカーを任されていたヌゴロ・カンテは起用されなかった。チームを変えるために前任者の色を消す、という干され方はよくあるが、この場合は違う。トゥヘル監督はパリ・サンジェルマンの監督に就任する際に、カンテの獲得を熱望していた。現在は、中盤の守備からのカウンター、という戦い方をカンテ1人に任せきりだったチーム全体を変えるために控えに回しているだけだ。
最終ラインのメンバーの巡りあわせと、変化を促しつつもリスク管理をしっかりと行ったトゥヘル監督の上手さが、変化させつつ波に乗る、ということに繋がった。
こうして迎えたトッテナム戦、トゥヘル監督は更なる変化を見せた。ウイングバックとして新チームの象徴になるかと思われたハドソン=オドイを前線で起用したのだ。空いた右ウイングバックにはリース・ジェイムズが入った。ハドソン=オドイとはU18チームで共にヨーロッパを席巻した勝手知ったる関係で、チェルシーのサポーターにとって嬉しいコンビが右サイドに登場した。
ハドソン=オドイをより前のポジションで起用した、ということは、後方から順に改善してきたトゥヘル監督が、いよいよフォワードの部分に手を加えても良い段階になったと判断した、つまりチームに基本が浸透したことを意味する。