■マラドーナだったらこうしただろう

 全盛期のシャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタが中盤でタクトを振るったとしても、「ヘタフェの選手たちがバルサなプレーができるか」といったら、これも答えは「ノー」だ。イニエスタがヘタフェのようなハード・スタイルに適応できるかどうか……。これも、そう簡単なことではない。

 たった一人でヘタフェのプレー・スタイルを変えてしまえる選手がいるとしたら、それはやはりディエゴ・マラドーナだろう。

 中盤からトップまで、攻撃的なすべてのポジションでプレーでき、味方の特徴と相手の守備の弱点をすべて計算に入れて、「勝利への道」を逆算しながらプレーできるマラドーナであったなら、味方選手たちの特徴を利用しながらゲームを組み立てて、ヘタフェというチームを根本的に変えてしまえるかもしれない。そう、彼が、SSCナポリでやったように……。

 まだ経験の浅い久保にマラドーナと同じことが期待できるわけはない。だが、これから半年間ヘタフェでプレーする中で、チームのスタイルに順応しながら、その中でどのように自分を生かすようなプレーができる道を見つけられるのか? 必要な場面では守備のタスクをしっかりこなしながら、しかし、時には相手の攻撃を“見切る”といった判断をして、守備の負担から自由になって(つまり、守備をサボって)攻撃に出ることができるようになるのか?

 このタフで守備的なチームの中で自分を生かせる術を見つけ出すことができれば、久保にとってはこのチームでの経験は大きな財産となることだろう。そうなった時、初めて「今回のヘタフェへのレンタル移籍は成功だった」と言い切れることになる。

※第3回に続く

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