■メッシがヘタフェに入ったとしたら
それでも、久保は相手の最終ラインとMFの間にスペースを見つけて、そこに入り込んではなんとかパスを引き出そうと努力していた。また、後半に入ると右サイドに張るのではなく、中央にポジションを変えてシャドーストライカー的にプレーする時間が長くなっており、サイドでの守備の負担は少なくなっていた(あれだけ長い時間そういうプレーをしていたのだから、もちろん、これは監督からの指示だったはずだ)。
もちろん、チームとしての守備力を落とすわけにはいかない。だが、せっかく加入した久保の攻撃的なセンスを生かさないのはもったいない。チームとしても、監督としても久保の守備の負担を軽くする方法を、今後も模索していくことだろう。
もっとも、今ヘタフェのような状態のチームに、久保のようなテクニカルで攻撃的な選手が加わったとしたら、どんな名選手であってもかなり苦労するはずだ。
現実にはあり得ないことだが、思考実験として考えてみよう。もし、ヘタフェにリオネル・メッシが入ったとしたら、メッシはこのチームでどんな役割を果たせばいいのか?
いかに守備はしないメッシといえども、このチームでは守備の負担は免除されないはずだ。また、いかにメッシといえども周囲から孤立した状態でドリブルをしかけても、そう簡単に何人もの選手を抜いてゴールまで辿り着けるとは思えない。ましてや、守備の仕事もこなしながらでは、かなり苦労することだろう。
メッシのドリブルが素晴らしい切れ味を見せているのは、FCバルセロナというチームの中でプレーしているからだ。バルセロナだからこそ、メッシは守備をほとんどしないですむし、相手チームの守備陣としてもメッシだけに集中するわけにはいかない。