■大きく変わりつつあるJリーグの姿

 一方、かつては「実力が拮抗していて、やってみなければ分からない」と言われていたJ1リーグは、今ではかなり序列化が進んでいる。連覇が期待される川崎フロンターレが“横綱”であり、優勝の可能性がある数チーム(具体的に言えば、昨シーズン、今シーズンのACLに出場したクラブ)が“三役格”とでも言おうか。2021年シーズンを考えても、それ以外のクラブが優勝するとは予想し難い。

 日本のプロ野球(NPB)にも“横綱”が存在する。福岡ソフトバンクホークスである。

 ソフトバンクは2020年には日本シリーズ4連覇を決めた。日本シリーズでは2014年以来7シーズンで6度の優勝。しかも、2019年と2020年の日本シリーズでは読売ジャイアンツを相手に4連勝して優勝を決めているのだ。

 選手層の厚さやチーム内競争の激しさ、そして選手育成のうまさなど、福岡ソフトバンクホークスと川崎フロンターレにはどこか共通したものを感じさせる。

 JリーグやNPBは1年近く(Jリーグは約10か月、NPBの場合は約8か月)をかけて戦うので浮き沈みはあっても、結局は層が厚く、力のあるチームが優勝を飾ることになる。だが、大相撲はたったの15日間の勝負。ピーキングがうまくいって良いスタートが切れれば、一気に突っ走ってしまうことも可能な日数だ。逆には歯車が噛み合わないと、連日取り組みが続く中で立て直すのは難しい。

 それが、大相撲とJリーグやNPBとの違いなのかもしれない。

 もっとも、それは後付けの理屈でしかない。

 Jリーグが何か月もかけて勝負を決めていたのはもう25年前から同じだったし、大相撲が15日制なのも昔から変わりはない。たまたま、現在のJリーグには“横綱”がいるだけであって、もし川崎が存在しなかったら、Jリーグはやはり「戦国リーグ」と言われるだろう。

 問題にすべきは、“横綱”が存在するリーグ戦と、どこが勝つか分からない「戦国リーグ」を比較したら、どちらが面白いかという点である。

 プロ・スポーツであるならば人々に娯楽を提供することは社会的責務だし、一人でも多くの観客を動員しなければクラブの経営は立ち行かない。「誰が“横綱”を倒すか」という興味と、「どこが勝つか分からない」という興味では、どちらの形がファンの興味を引き付けることができるのだろうか?

 もちろん熱心なサポーターであれば、チームの成績や優勝の可能性には関係なくサポートし続けてくれるだろうが、浮動票的なライト層のファンを動員するためには「優勝争い」はとても重要な要素になるはずだ。

※第2回に続く

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